たり(助動詞)(「とあり」の約)文語。「たら・たり(と)・たり・たる・たれ・たれ」と活用。体言に接続して、断定の意を表す。形容動詞の語幹(多くは漢語)に接続するものは、全体でタリ活用の形容動詞として用言に収められる。…だ。…である。平安時代以降おもに漢文訓読系統に用いる。「我にとつぎて御妻たりき〔今昔一・一七〕君君たらずといふとも臣以て臣たらずんばあるべからず〔平家二・烽火之沙汰〕。幽閑の寂寞たる御すまひを〔延慶本平家 二中・新院厳島御参詣〕」
なり(助動詞)⑴(「にあり」の約)「なら・なり(に)・なり・なる・なれ・なれ」と活用。断定の助動詞。形容動詞の語幹に接続するものは、全体でナリ活用の形容動詞として用言に収められる。①地点・場所等を表す体言に接続し、ある場所に存在していることを述べる。動詞とも解せられる。…にある。…にいる。「今日もかも都なり(奈里)せば見まく欲り〔万葉一五・三七七六〕。富士の山はこの国なり〔更科〕」「大和なる法隆寺」②体言および活用語の連体形(奈良時代には体言に限られる)に接続し、ある事実を断定して述べる。…である。「我(あ)が身なり(奈里)けり〔万葉一八・四〇七八〕。こころに思ふ事を見るもの聞くものにつけて言ひ出せるなり〔古今・序〕。竹の編戸なれば、あけずとも押し破らんこと易かるべし〔平家一・祇王〕⑵(「音(ネ)あり」または「音(ナ)あり」の約という)「◯・◯・なり・なる・なれ・◯」と活用。動詞・助動詞の終止形(平安時代以降はラ変活用には連体形)に接続する。伝聞推定の助動詞。①音・声が聞える。「豊葦原の千秋長五百秋の瑞穂国は、いたくさやぎて有りなり(奈里)、きけばかしこし〔正倉院仮名文書〕。ふえをいとをかしく吹き澄してすぎぬなり〔更科〕」③直接に経験しないことを、間接に聞いて知った意を表す。…ということである。…だそうである。「汝をと我を人ぞ離(サ)くなる(奈流)〔万葉四・六六〇〕。信濃にあんなる木曽路川といふ今様を、これは見給ひたりし間、信濃にありし木曽路川と歌はれける〔平家六・嗄声〕④(近世以降の誤用)詠嘆を表す。「少女ども笑みて答もなげに見ゆなり〔草径集〕」
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